ランドセル130年史

第2章 ランドセルにおける組合活動の推移①

ランドセルの製造・販売に携わる者として、今日のランドセル業界の隆盛は、さまざまな要因はあれども、業界諸先輩方々の長い歴史の中でのさまざまなご苦労の上にある事を忘れてはならないだろう。
「ランドセル130年史」発行にあたり、先人のご苦労の一端でも探ってみようと思う。
ランドセルにおける組合活動の記録として残っている資料も少なく、戦後間もなくの昭和22年に発刊された『鞄嚢タイムス』、及び 『bagジャーナル』等の業界新聞資料から歴史を紐解く事にした。

各地区に鞄協会の設立

戦後の昭和22年から24年にかけては、第1次ベビーブームと言われ、新生児が260万人を超え、昭和27年まで毎年200万人を超える新生児が誕生した。
これらの児童が小学校に入学する頃には、日本経済も復興の兆しが見え始め、あらゆる産業が生産活動を活発化しつつある時代であった。
我が業界においても、これら大勢の児童が小学校へ入学するに当たり、ランドセルの供給が大きな課題となっていた。

又、戦時中は統制品であった豚革・牛革も統制が解除され、それまで布畠品を中心に作られていたランドセルにも、改めて積極的に使われるようになっていった。
これらの時代背景の中で、戦後の現象で商・工の分野が混乱していた中、利害を共通する業界の諸問題も当然に発生して来た。
東京・名古屋・大阪の鞄産業、特に卸商組合等が中心となり各地域に鞄協会が設立され、昭和26年には各地域の鞄協会が一堂に会し、日本鞄協会(初代堀川栄一会長)が創立される事になった。
当然、国民の経済活動、移動に伴って使用される鞄供給は勿論の事だが、入学児童の天文学的な数に対して、全国へのランドセル供給は鞄協会としても喫緊の課題でもあった。
また当時のランドセルは、布畠・ビニール・豚革・牛革等、材料の種類も多く、原材料を何にするか、またそれぞれの素材別生産量は如何にするか等、各地域の鞄協会ではランドセルの生産数・販売数、そしてその後の流通在庫の問題に対しても、それぞれ対策を練る必要があった。

名称の統一や意見交換活発に

昭和26年には、ランドセルの製造規格や品質の問題も各地域の協会内で議題に上り、ランドセルの付属部分の名称の統一化も話し合われている。
たれ(カブセ)、背板、前段、中仕切、大町(大マチ)、小町(小マチ)、肩紐(肩ベルト)、小紐(又は下紐)等、現在使用されている各部の名称がこの頃にほぼ統一化されている。
品質の問題については、東西生産地の販売価格等の思惑による格差と、制料、特に金具の品質に対する批判も多かった。
粗悪品に対しては、商工共に危機感をもって研究会等の名の元、努めて話し合いがもたれている。
昭和28年7月にもたれた大阪鞄協会主催の第3回学用鞄研究会では、ランドセルの需給バランスについて話し合われており、積極的な問屋(商)側、自重を求めるメーカー(工)側の立場で意見が分かれているが、無理を戒め、供給過剰にならぬよう自重の方針を堅持する事を申し合わせている。

鞄コンクールの前身

昭和29年9月、業界紙の産業通信社が主催となり、通産省・文部省・各地区鞄協会等が後援する、『学生鞄競技会』(のちに日本鞄協会主催の鞄コンクールに発展する)が開催されている。
後援者の中にYKK吉田工業の名もあり、当時盛んに鞄類に採用されていたファスナーを効果的に活用したランドセルの出品を求めているのも興味深い。
昭和30年代に入り、東京・名古屋・大阪・豊岡の各卸商組合による、鞄全般の取引条件の改善を主眼とする審議会を、全国一丸となる必要性があると判断し、9月に4都の代表者会議を開催し、『全国取引審議会』を発足させている。
この審議会は、全国の小売店(主に百貨店)に対し、支払条件の改善を柱に、返品問題に関わる取引条件全般に亘る諸問題につき話し合われ、不良取引先のリストの交換等も行われている。
又、第2の事業としてかねてより問題であったランドセルの需給バランスについても、傘下の会員に対しランドセルの販売数、在庫数の資料提出を求め、需給調整に乗り出す事を決定している。これは、ランドセルの合理的受注を行うと共に、返品の悪弊を根絶する事を目的とするためのもので、今後は卸業者の全国的結東を強固なものとする事が唯一の道であるとして再確認の申し合わせを行った。

昭和32年に発足した『東京鞄製造連盟』では、全国鞄卸商連盟の運動に歩調を合わせ、合理的な受注を行うべく、かねてより具体策を検討していたが、8月の理事会にて、
1.受注締め切り11月末日
2.生産締め切り2月末

と決定し、問屋筋に申し入れの上、協力を要請する事としている。

昭和33年には、全国卸商連盟によるランドセルの使用状況に付き、全国46都道府県、260校に及ぶ大がかりな調査結果を公表した。
調査内容は

1.価格について
2.型と構造、重さについて
3.色について
4.金具について
5.肩紐・縫い糸について

であった。

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