ランドセル130年史

第2章 ランドセルにおける組合活動の推移③

ランドセル廃止問題

昭和41年、全国卸商連盟と全国鞄工業組合連合会では、この数年にランドセルを廃止した自治体・学校の調査をしている。
既にランドセルを使用していない東京の私学4校に、名古屋市内で公立が1校、岡崎市でも公立1校、兵庫県西宮市では市内小学校すべてが昭和40年4月入学時より、ランドセルを廃止している。当時、全鞄卸連が東京都に協カして行った全国調査によると、教師からはランドセルに対し「合理的で簡便な、かつこれ以上の優れたものはない」との多くの回答があった。
この頃、マスコミによるランドセル廃止論報道がさかんになされ、業界を震憾させていた。
「マスコミに乗った一時のブーム的問題に過敏にならず、これを機にランドセルの在り方を認識する事が大事である」と、業界幹部のコメントも残されている。

クラリーノ発表

昭和41年7月、倉敷レーヨン㈱(現在の㈱クラレ)は、テスト販売を続けていたランドセル用クラリーノ(人工皮革)をその年度の需要期より本格的に販売する方針を打ち出した。
「上代は5,000円前後に落ち着く模様で、重量は皮革が1,250gの所、850g前後と、著しく軽量で、雨にも強い等多くの長所を備えている。」と発表している。
昭和42年1月、東日本鞄工業組合(三井松次郎理事長)は、かねてより要請していた主婦連合会との懇談会を開催。
工業組合より改良を施したランドセル・学生鞄を陳列し、消費者側からの意見を聞いている。
活発な意見交換の中で、主にさまざまな修理箇所について改良方の要請がなされたが、重量に関しては特に問題は無く、価格面も現在の消費者物価の動向を見ても高いとの苦情は無く4,000前後が妥当であるとの事であった。
同年6月に開かれた、大阪ランドセル工業会(井上栄捌会長)では議題の中に皮革の価格相場の研究、クラリーノ素材の進出への対策、マグネット錠前の件、等が話合われている。
翌43年に開かれた、大阪ランドセル工業会では、

  1. 需給バランスを維持する為、今年度も調整(生産)事業は認可の如何に関わらず推進する。
  2. 工賃を含め諸資材高騰の折、価格を4月より最低15%以上引き上げた値段に改正する。
  3. 取引条件を毎月20日締め月末払い、手形サイトは起算120日迄とする。合わせて歩引きはお断りする。
  4. 一層の合理化を図る為、工業会にて副資材の共同一括仕入れをする。斡旋料として若干の手数料を会に納付する。
  5. 会費の長期滞納者への対策として、1年以上未納者へは意思の確認後、除籍又は退会させる。

等が話し合われた。

「ランドセル廃止運動」に反対の動き

同年2月に大阪鞄協会で、西宮市教育委員会が「教育正常化」の名のもとに進めて来た「ランドセル通学廃止』運動について、その後父兄がどのように考えているかを今後の参考にするべく、市民代表・学校関係者を招き懇談会を催している。
この中で、「ランドセル廃止」について多数の市民からは、強い反対意見が出され、この運動に対する批判が高まった。
問題点としては、

  1. ランドセル廃止で教科書の持ち帰りが無く帰宅後勉強をしなくなった。
  2. ランドセル廃止で教科書を自宅用にも取り揃えている家庭がある。
  3. 出来る子、出来ない子の差が大きくなる。

等、当初より懸念していた問題がそのまま父兄の不安となって表れた。

昭和44年、東日本鞄工業会(旧東京都鞄工業組合)(大峡幹夫理事長)では、東京通商産業局にランドセル・学生鞄の出荷調整規定変更の認可申請を行って来たが、この程変更申請が認可された事が書面により通達されている。
同年4月に大阪ランドセル工業会(井上栄翻会長)では、学生鞄業者との合同組織結成の気運が高まり、ランドセル工業会を発展的に解消し、大阪皮革学生鞄工業会を設立する運びとなった。(のちの昭和46年には工業会を再結成する事になる。)
この頃、韓国内において、ランドセルの生産がなされ、韓国国内で使用されているとの記事も見られる。

昭和45年、一部の地域で教育基本方引を改める事を目的にランドセル通学が廃止されている中、千葉県館山市教育委員会では、値段を統一したランドセルを認める方向である事、また、船橋市、市川市においても手提げ袋通学でダラシがないとの市民からの悪評をかい、市議会の働きかけで本年度500名をテストケースにランドセルを持たす事に決まった事等、ランドセルに対する再認識の気運が高まってきている事が報じられている。

昭和46年には、東京都教育委員会が五月に行った『ランドセルの使用に関する調査報告』について、マスコミによる曲解された報道を含め、ランドセルの廃止の方針を示したものと誤解されているため、㈳東京鞄協会(大峡幹夫会長)、東京鞄卸商業組合(飯塚正二郎理事長)、東日本鞄工業組合(若松種夫理事長)、東京袋物商業協同組合(尾関深一理事長)の東京鞄4団体では業界の見解と鞄業界のランドセル使用に関する意見書を発表。関係当局に配布するとともに、都議会議員の斡旋により都教育庁幹部とも懇談している。
これを受けて、東京都教育庁体育部長名にて各市町村の教育委員会宛に、「この調査報告はランドセル使用廃止の方針を示すものでは無い」との通達がなされる。
内容は、『昭和46年5月24日、新聞発表したこの事について、東京都教育委員会がランドセル廃止を示したものと誤解されている向きがありますが、この調査報告は、ランドセル使用についての意識調査であって、ランドセル使用廃止の方針を示すものではありません。ついては貴管下小学校に対し…誤解の無いよう周知の方よろしくお取扱い下さい。』(全文)との事であった。

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