ランドセル130年史

第7章 ランドセル用革の現状と 将来への展望

ランドセル用の素材は、現在、人工皮革が主流であるが、従来は牛革、豚革などが使われていた。そんな中で現在、ランドセル用の天然皮革の状況はどうなっているのか、について専門家の話を聞くため、編纂委員会のメンバーは、平成28年3月31日、東京鞄協会の事務所で話を聞いた。

話を聞いた専門家は、左記の方たちである。
 ◎ミドリオートレザー株式会社  技術開発部次長 斎藤哲郎氏
 ◎川村通商株式会社  皮革物資事業部課長 芝口栄一氏

質問のポイントは以下の通り。
①ランドセル用革の種類
②ランドセル用革の特徴、及び時代による変遷
③ランドセル素材における天然皮革のシェアについて
④ランドセル用革の現状と将来の展望

①のランドセル用の革については、現在牛革と馬革の2種類が中心である。その大半、9割以上が牛革である。牛革、馬革以外に革を使うケースというのは、背裏や冠せ裏(かぶせうら)など に豚革を使うことはあるが、多くはない。
ランドセルの素材としては人工皮革が圧倒的に多いが、ただ、最近は幾分、ランドセル用の革の需要が増えており、生産も従来より増えているようである。
ただ、現在はランドセル用の革を作るところはほとんどなくなってしまって、いまは、2~3社が残っているのみという。

②のランドセル用牛革の特徴
以前はタンニン鞣しが主流であったが、表面の塗膜が割れたり問題があって、その後クロム鞣しの革が中心となっている。
ここ20年ぐらいは、ラミネート加工で塗膜を張る方式が主流である。いまは「スムース」ではなく「シボ」タイプの革が人気だが、大きな理由は、スムースだと傷が目立ちゃすく、日本ではそれが嫌われる。それを隠すためにシボタイプが多い。
(皮革製品の表面のシワ模様を「皺(しぼ)」と呼び、皮革業界では革にシワを付けることを「皺(しぼ)を付ける」という)
「シボ」というのは表面に凸凹のあるシワや、型を押したようなザラッとした表面のことだが、ランドセルでは今は型押しという方法をとらずに、全部、離型紙を使っていると言われる。
離型紙というのは両面接着テープのような役目をする紙で、片側にウレタンやアクリルなどを吹き付けてシボの入った模様を作り、反対側は接着剤をつけてその接着面を革に貼り付けることによってシボがあるようにする。
今はこのように、金型で型を押すのではなく、天然皮革も人工皮革も離型紙を使うのが主流という。また、この技術は日本が一番優れているともいわれる。これにより品質的にも安定し歩留まりもよくなったという。今はこの方法がベストではないが、よりベターな方法だろうと。

革についての寿命を見ると、タンニン鞣しは劣化が早いようだ。クロム鞣しなら、保管状況にもよるが、30年ぐらいはもつと言われる。クロムというのは身体に悪いと言われる6価クロムではなく3価クロムなので環境的にも問題はない。

牛革の生産地は牛肉を食する北米、南米、豪州などが主産地である。
馬革(コードバン)に関しては、一般的にはフランスとかポーランドが生産地のようである。馬肉を食するところということである。

③の天然皮革で作るランドセルのシェアについては、大方次のような認識で大きくは外れていないであろうと言われる。ランドセルの生産は、流通在庫も入れて全体で年間100万個ぐらいと言われる。それに、革の生産枚数から勘案すると、大体12~13%であろう。
それでも最近は革物が増えている。 人工皮革が出てくるまでは全部革物だったが、人工皮革がどんどん増えて革物は一時もっと減った。それが最近少し戻ってきているようではある。それでもシェアはそんなものではないかと思われる。ただ、正確な数字はわからないのが実情である。

革の値段については、相場ものであること、或いは為替の問題もあってよくわからないが、30年前と比べて大きな変化はないのではないか。ただ、人件費や諸経費が上がっているので、全体的に言えば1・5倍ぐらいになっているのかもしれない。

革の製作期間は大体2週間ぐらいで、保管は、巻くより平らにして保管する方がいいと思われる。革メーカーでは一般的に、馬かけのような形で保管することが多いという。

④の将来の展望については、革製のシェアが落ちているが、このところ少し戻ってきているのが現状であるので、もう少し右肩上がりで伸びてほしいというのが大方の感想であろう。
現在、ランドセルの市場でも、ブランド戦略とか、手作り感が求められており、一方で、人工皮革ものも値段が上がってきている事もあって、革物が求められる要素はそろってきているのかもしれない。特に手作り感などは、革物の方が消費者に伝わり易いかもしれない。
革そのものの品質についていえば欧州物の方がいいが、触感とか質感、或いは色落ちの問題、キズが付きにくいという問題については、日本の方が技術的に上だろうと思われる。

(平成28年3月釘日、東京鞄協会事務所で取材)

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