コラム

革ランドセルの歴史と現状

現在、ランドセルの素材は、人工皮革が市場の70%以上を占めていますが、従来は牛革、豚革などを使用したランドセルが主流でした。

牛革と馬革(コードバン)についてその特徴や現状についてまとめました。

ランドセル用革の種類

ランドセル用の天然皮革については、現在牛革と馬革(コードバン)の2種類が中心です。牛革の生産地は牛肉を食する北米、南米、豪州などが主産地です。

馬革(コードバン)に関しては、一般的にはフランスやポーランドなど馬肉を食するところが生産地です。

ランドセル用に用いられている革は2種類と述べましたが、実際ランドセルとして販売されている9割以上が牛革です。牛革、馬革以外に革を使うケースとしては、一昔前までは背裏や冠せ裏(かぶせうら)など に豚革を使われることが多かったようですが、今はほとんどが人工皮革などを使用しています。

革のランドセルは人工皮革のランドセルに比べて生産が減ったものの、いまだに人気が高く人工皮革のランドセル以外にも革のランドセルを取り扱っているメーカーは多いです。しかしながらランドセル用の革を作るところはほとんどなくなってしまい、いまは、2~3社が残っているのみという現状です。

ランドセル用革の特徴と時代による変遷

「タンニンなめし」と「クロームなめし」

ランドセル用牛革の特徴として以前は「タンニンなめし」が主流でした。「タンニンなめし」とは植物タンニン剤を、時間をかけて革に浸透させてなめす方法のことを指します。

植物タンニンなめしのデメリットは雨に弱く、変色や変化が激しく、革のお手入れをこまめにでき変化を楽しめる方向けの革に仕上がるため、ランドセルには不向きな加工でした。そのため表面の塗膜が割れるという問題が早々に起こり、その後「クロームなめし」の革が中心となりました。

「クロームなめし」はクローム化合物を使って短時間で大量になめす方法です。 タンニンなめしと比べて変色・変化が控えめで、メンテナンスを頻繁に行う必要がなく、耐久性にも優れているためクロームなめしの革は、身に付ける衣類、カバン、クツなどに多く利用されています。革についての寿命を見ると、「タンニンなめし」は劣化が早く、「クロームなめし」なら、保管状況にもよりますが、30年ほどもつといわれています。

植物性ではないクロムは身体に悪いというイメージを持たれるかもしれませんが、体に害があるのは6価クロムと言われるもので、革のなめしに使用されているのは害のない3価クロムなので身体にも環境的にも問題はありません。

シボや型押し加工

近年では革の色のバリエーションを出すためにラミネート加工で塗膜を張る方式が主流です。天然革はどうしても自然の傷があるため表面に加工のないスムース加工だと傷が目立ちやすいため型押しを行うシボタイプの革を用いるのが一般的です。

皮革製品の表面のシワ模様を「皺(しぼ)」と呼び、皮革業界では革にシワを付けることを「皺(しぼ)を付ける」といいます。

「シボ」というのは表面に凸凹のあるシワや、型を押したようなザラッとした表面のこといい、ランドセルでは今は型押しという方法をとらずに、全部、離型紙を使っているそうです。

離型紙というのは両面接着テープのような役目をする紙で、片側にウレタンやアクリルなどを吹き付けてシボの入った模様を作り、反対側は接着剤をつけてその接着面を革に貼り付けることによってシボがあるように加工しています。

離型紙を用いることで革の強度や耐久性を高め、品質的にも安定しました。現在ではこの離型紙を用いる方法は天然皮革も人工皮革のどちらでも主流となり、この技術は日本が一番優れているといわれています。

革ランドセルのシェアとこれから

ランドセルの生産は、流通在庫も入れて全体で年間約100万個ほどで、少子化の影響を受け近年では年間100万個を切るようになってきています。

その中でも天然皮革で作るランドセルのシェアについては、革の生産枚数から推測すると、12~13%ほどであると考えられます。この数字でも最近では革の生産数は一時期に比べ増えてきたそうです。

人工皮革が出てくるまでは主流が革ランドセルだった時代から人工皮革のランドセルが主流となり革のランドセルは激減しました。それが革の良さが再確認されるようになってきて最近少し戻ってきているようだと革メーカーの担当者は言っていました。

革の価格の上昇は緩やかであるものの人件費や加工費、流通コストなど生産にかかる費用の上昇やメーカー自体が少ないため1.5倍~2倍の値段になり、人工皮革に比べ価格の上昇は大きいようです。

先にも革製ランドセルのシェアは革ランドセルが主流の時代から減っている述べましたが、このところ革の良さが再確認され少しずつ回復しています。

ランドセル市場でも工房系ランドセルが人気となり手作りの良さや革の持つ高級感などのイメージから人気を博しています。人工皮革のランドセルと革のランドセル好きな素材を選べるというのが大事なことだと思います。

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